涌井 大輔　　　

昨年の赤本になぜかＭＧＳの連載原稿であった「北に夢あり」が掲載されていた。後から読んでビックリしたのだが、同時に人間よりも先にバーバリアンズの仲間入りをしたようで何ともうれしかったのを覚えている。そして、バーバリアンズの年間のシーズンが終了し、人間自体もバーバリアンズの中に溶け込むことができた喜びを、今かみしめているところだ。

失うものは何もないゼロからの出発。25歳で北海道に来て何かを見つけにやってきた。まだ、残雪が遠くの山々に残り、道ばたにはふきのとうがあちこちで見ることのできる北国の遅い春。「いったいこの先に何が待ち受けているのだろう」不安と期待が入り交じる。しかし、その先に見たものは「夢の実現」であった。

余市町での生活スタート。遺跡発掘作業員としての勤務。教員採用試験受験、そして念願の合格。倶知安小学校勤務。さらには新井靖美さんとの婚約・・・。

アメリカンドリームという言葉があるが、さしずめこの場合は北海道ドリームといったところだろうか。移住をして１年、今ここに北海道にどっかと腰を下ろして生活している自分がいるとは夢にも思わなかった。ぎすぎすした生活から解放されて、いつもおだやかな気持ちでいられること。「北海道に来て本当によかった」万感の思いが胸にこみ上げてくる。

それもこれもみな、どこぞの馬の骨ともわからぬ自分を受け入れてくれた自分に関わるすべてのみなさんのおかげといっても過言ではない。

運が良かったのだろう。バーバリアンズのメンバーとの出会いをはじめとして、いろいろな人と知り合うことができた。また、いろいろ助けていただいた。たった今もぼくが風邪をひいて寝込んでいると聞きつけて「大丈夫か」と遺跡発掘の仲間の人がお見舞いにバナナとリポビタンＤを差し入れてくれた。すごくうれしかった。こういう人たちに支えられているのだということをあらためて感じる。人とのつながりは本当に大切だ。

普段はまったく顔を合わせることのない人間同士が「ラグビー」という一つのスポーツを介して知り合い、またラグビー以外の場所でもいろいろな楽しみ方をして人生を豊かなものにしようとしている。これも人とのつながりであり、クラブライフの原点であると考える。そうしたクラブライフが、このバーバリアンズというチームはすでにできあがっていると思う。理想のクラブチームに一番近い位置にいると思うのだ。

そう、ぼくのこの夢の実現に関して、バーバリアンズでの豊かなクラブライフというのが重要なウェートを占めているような気がしてならない。自身の生活の中にラグビーが溶け込み「豊かな生活」を送れていることを、もっと幸せに思いたい。休日にグランドに行き、好きなラグビーをして、みんなとともに喜びを分かち合える。なんと幸せなことだろうか。全国多数クラブあれど、バーバのような活動をしているクラブはそうあるものではないということに気がつきたい。

全国のさまざまなクラブチームは自分達のカラーを全面に出したクラブ作りに追求し続けている。しかし、大半は暗中模索の状態で一進一退を繰り返しているのが実状だ。そんな中でバーバリアンズは自らの理想のクラブ作りを追求して、さらにそれを現実にしようとしている。これはすごいことだと思う。まさに発展途上にある段階で、何が起こるか予想もつかないわくわくするようなスリルがそこにある。また、自分がその中に入って少しでも力になれることがあるということに喜びを感じる。今、バーバリアンズのみんなは輝いている。

年間を通してバーバリアンズの活動を身をもって体験することができた。チーム自体も成績・ＮＰＯ活動ともに着実に一歩ずつ前進している。この流れを大切にしてさらに来年、再来年と前進し続けることができるよう力になりたい。バーバはこれからどうなっていくのか、きっと今後ラグビー界の注目すべき的となるであろう。きっといい方向に向かうはずである。そして、名実ともにクラブ日本一となり、理想のクラブチームのあり方を示すことができるだろう。そんな想像をしていると今からわくわくして仕方がない。

個人の目標としては、今年は北海道のレフリーとして認められること。さらには中央進出を狙いたい。採用試験も終わり、これまでとは比較にならないほど真剣にラグビーに打ち込める環境ができそうだ。また、バーバリアンズ帯同レフリーとしての立場から個々のプレーを指摘して、よりよいラグビーの手助けをすることも自分の仕事だと考えている。さらにはＣチームの一員として何とか今年は初トライを挙げてみたい。

でも、何より心からラグビーを楽しむこと。これがすべてであろう。また、チームのメンバーとの交流を通して、ますます自分の人生を豊かなものにしていきたい。これがぼくの究極の目標である。

初めて迎えるつらく厳しい北海道の冬。しかし、自分を取り囲むさまざまな人々の愛情に支えられて、暖かい冬を過ごしている。いてつくような寒さも気を引き締める意味ではちょうどいい。そして、この冬も終わりやがて春が来る。また素晴らしい仲間達とのクラブライフが待っている。そのとき、きっと心から思うはずである。

   「バーバリアンズに入って本当によかった・・・」と。


バーバのみなさん、今年もよろしくお願いいたします。